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2008年2月22日 (金)

筆について

森大衛が所属する独立書人団は、昭和の三筆の一人といわれる手島右卿先生が
創設した団体で、その基本練習は主に濃墨で長鋒の羊毛筆を用います。


でも、実は森大衛と羊毛長鋒筆との出会いと、独立の書風は無関係でした。


というのは、小学生当時、書き初め用の筆がパサつくのが嫌で、
たまたま富山県民会館の展示場でやっていた「中国物産展」で買った羊毛筆が
しんなりと柔らかく手触りも気持ちよく、なおかつ普通の墨汁の濃さでは文字が
滲むのが嫌で、自発的に濃墨の墨汁を使うようになったのがきっかけです。


羊毛筆&濃墨で書く線は、中に空気を孕んだような美しい渇筆(かすれ)が出来、
それは墨が足りなくなって紙に擦り付けたかすれではなく、筆圧とスピードの絶妙な
加減で白が生まれます。


すると、当時習っていた高田寿華先生もそのまた先生だった鶴木大寿先生も
羊毛筆で濃墨を使って作品を書く人だと知り、その偶然に心が躍りました。
両者の先生は子供達には至って普通に整った教育書写を教えていたので。


それが↓この高校時代の「望山臨涛」や「画龍点睛」にも色濃く出ています。

BouzanGaryou
(サイズ:双方ともヨコ55センチ×タテ180センチくらい)


当時は、手島右卿という書家も、独立書人団という団体も知らず、
高校に入ってからは高田先生も書塾を辞められて師事はしていなかったので、
鶴木先生の作風を真似ることだけが指針になっていました。
高校の書道の先生だった馬場雨川先生は、創玄書道会所属で近代詩文書を
書かれる人だったので、少し近代詩の表現も教わりましたが、展覧会に
応募する作品は鶴木先生の路線を貫いていました。
ただ、鶴木先生に師事していたわけではないし、変なプライドもあって、
鶴木先生の既存の作品と同じ語句を書くことは避けていましたけどね。


さて、その羊毛筆ですが、馬やイタチなどに比べ柔らか過ぎて初心者には
難儀な筆です。まして毛先が長いものはなおさら。さらに値段も高価。
しかし、そのしなやかさゆえに含んだ墨が紙に深く浸透するんですよ。
コシの強い馬やイタチの毛の方が紙に強く当たるのにあら不思議。
同じように書いた線でも羊毛で書いたものの方が艶やかで黒々としています。
紙を裏にすると一目瞭然です。また淡墨で書いた時は心の機微が紙に露になります。


と、書いたところで話が長くなったことに気が付いたので、この続きはいずれまた。


(※)ご質問にあった羊毛の原材料についてですが、
   正確には<山羊>でございます。

   こちらをご覧くださいませ。

   羊でしたらモワモワで筆にはなりませんことよ。
   もしかしたら遊び筆としてはあるのかも?しれませんが。

   「じゃあなぜ羊毛と言うのかよ!」と聞かれれば、
   昔からそう言われているので…としか申せません。(^^;

   「なんで緑を青って言うんかい!」みたいなもん?
   ちょっと違うかな?(^^;;;

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コメント

hiroshiさんへ

羊毛一本一本の毛の太さや、毛量(長さに対する太さの比率)や、
毛質(弾力やコシの位置)によってさまざまなので、
先揃えと先梳きというだけでは簡単には説明できませんが、
使用後は丁寧にケアしながら、書き込めば書き込むほど
自分にとって使い勝手がいい筆に徐々に絶妙に変化していってくれて、
一生お付き合いできるのが羊毛の特性かもしれないですdenim

投稿: 大衛 | 2013年8月 2日 (金) 17時06分

私は大学で書道科で勉強しているのですが、その中で羊毛に興味を持ちました。
しかし周りに羊毛を使っている人がいません。
そこで質問させて頂きたいのですが、先揃えのものと先梳きのもののそれぞれの利点と欠点を
教えて頂けないでしょうか。お願いします。

投稿: hiroshi | 2013年8月 1日 (木) 18時34分

みこマーマさんへ


ごめんなさい。私は書きやすさで紙を選んだことがなく、
書きにくくても仕上がりの墨色が美しい紙を選びます。
主に使っている銘柄は「紅星牌綿料単宣」です。

投稿: 大衛 | 2013年6月13日 (木) 13時37分

長鋒筆の扱い方を検索して、ここにたどり着きました。 
はじめまして、森先生。長鋒筆について濃墨を使っていらっしゃると知り、これは試してみようとおもいました。ただ紙に対してもずいぶん書き易い、書きにくいがあると思いますが、私の先生は「どんな紙でも書けなければ・・・」と言われます。まだ長鋒を使い始めの私としましては、長鋒筆で書きやすい紙を知りたいのですが、・・・。よろしくお願いします。

投稿: みこマーマ | 2013年6月12日 (水) 10時16分

私も書道を始めてから(お習字から移行した時から)は、羊毛筆と濃墨は身近な物となりました。最近、書道に関わる方々とお話すると、羊毛筆と濃墨を『使わない』ではなく『使えない』と言われる意見を多く耳にしますね…。近年では良い毛が取れなくなってきて、ますます高価な物となっている羊毛筆で…私などは、欲しくても指を加えているばかりです(^。^;)

投稿: タンポポ | 2008年2月26日 (火) 09時56分

はじめておじゃまいたします。
私も長鋒の羊毛筆を使って書道を勉強しています。
先日、羊毛筆を羊の毛だと言い切ってしまいましたっ!!おはずかしい!今度訂正しないと。
森先生の作品は雄大さと繊細さがあって、とってもすてきですね。

投稿: みん | 2008年2月24日 (日) 00時34分

森先生、ありがとうございました。
はやり素人の間違いでしたね・・・^^;
「聞くは一時の恥・・・」でお尋ねしてよかったです。

「緑を青・・・」は私も子供に聞かれたら答えられません^^;

10cmの敷居のお教室に私も習いに行きたいです^^

投稿: 多紀 | 2008年2月23日 (土) 18時17分

羊毛筆のお話が出たので質問させてください。

私は羊毛筆はずっと羊(ヒツジ)の毛だと思っていました。
が、最近とあるサイトで羊毛筆は山羊(ヤギ)の毛だと書いてあり驚きました。
羊毛筆がヒツジの毛だなんていかにも素人が間違えそうなことだ・・・と。

確かに素人なんですが^^;
森先生に言われたら納得できると思います・・・
恥を忍んでお尋ねします・・・本当ですか?

投稿: 多紀 | 2008年2月23日 (土) 00時05分

初めてまして ジュリアと申します。

先月まで、やはり書き初めで子供が苦労していたので、とても参考になりました。
私自身も24年ぶりに独学ですが、筆を持つ事にしました。

これからも勉強の為にお邪魔したいと思いますので、よろしくお願いします。


私も筆記は右ですが、携帯は左、筆なら左でも書けます。よく「変」て言われます。

投稿: ジュリア | 2008年2月22日 (金) 13時53分

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