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2008年7月26日 (土)

「廻」

この個展も終り、独立に応募する大作に取りかかることとなった。


前年までのように評価を焦ってはいない。焦っていなかったがゆえに、
あっという間に9月下旬の〆切が迫ってきた。ヤバい。


しかし、何ヶ月も前から子供達を教える書道教室の添削に
ちょっとした空き時間ができると朱液で半紙に草稿は書いていた。
タテヨコの比率に合わせて半紙を指でカットして、
「この位置から入筆し、この位置で角度を変え、ここでガーっと行く!」


大きな紙に書くということは、全体像が把握しづらくなる。
ならば、小さな紙で高い視点の俯瞰で見る感覚で構築を想定すべきだ。


書く文字は「廻」に決めていた。


筆法は空海を基本とした。具体的に空海のどの文字がこれだ
というものではなく、線の食い込みや筆のつり上げやひねりなどの
展開がそうだということだ。
展開が揺るぎのないものになっていれば、たとえ感情的なものが
激しく爆発したとしても書芸術としての風格は失われない。
この信頼とは保守ではないということはそういうことでもある。


朱で書いた半紙の草稿は、軽く1000枚を越えた。
稽古場に行ってから、子供達に使わせる半紙や添削の朱液が
少なくなっていることに気が付き、
「今日は集中して1人3枚だけで仕上げよう!」とか
「今日のお手本は君たちの筆を使います!」とごまかしたりした。
実際子供達は集中したし、それぞれの筆で手本を書いてみせることは、
指導としては悪いことではない。
しかし、自分が紙と墨を使ってなくなっちゃってたのが原因というのは
あまりよろしいことではなかったかもしれない。


リリースから1年近く経ってもずっとループさせて聴いていた
ユーミンの「TEARS AND REASONS」
「恋の一時間は孤独の千年」というラテン系の曲の次にラストの「CARRY ON」
そしてまたオープニングの「無限の中の一度」に戻る流れが好きだった。
稽古場に行く車の中で聴き、部屋ではプロモーションビデオを流していた。


とうとう〆切前日になってしまった。
アトリエの机をずらし、毛氈を敷き、紙を繋ぎ合わせ、茶系の淡墨を
大きなタライになみなみに入れ、買ったばかりのデカい筆をその中に浸し、
一気に「廻」を書いた。


乾くまでに相当時間がかかった。
もう1枚書いてみたいが下敷きが渇くまでにさらに時間がかかる。


そういえば、このサイズの作品に合う落款印を作っていなかった。
乾くのを待つ間に彫らねば。


印は仕上がったが、作品はまだ乾かない。
ドライヤーの熱を作品と毛氈の間に送りながら必死に乾かし、
印を押して仕上げたのが夜の7時。


知り合いの宅配便屋さんに頼み込んで翌日必着で発送した。


Kai


つづく

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